その昔、日出る国の中心に位置する街道沿いの小高い丘の上に、悪事を繰り返す“妖かし”たちが住む里があった。
この“妖かし”たちの元気の源は「らーめん」といい、この国中の“妖かし”が、食べに集まってくるという。この「らーめん」は絶品の美味しさであるとの噂が麓の村に広まり、そこに住む若者が食べたさのあまり、この国に忍び込んだ。
そこでは職人たちが豚や鶏の骨をグツグツ煮たり、細長い麺を打つ光景を目の当たりにした若者は思わず唾をゴクリ。その瞬間、“妖かし”に見つかり、逃げたのだが、黒い雲が空一面を覆うように鋭い爪で襲い掛かってきた。だがその時、天が割れ、稲妻が走り、一匹の龍が現れ、次々に雷を落とし、“妖かし”を退治した。
村に辿り着いた若者がその出来事を話すと、長老はこう言った。「その龍は『戯家王』という伝説の神である。“妖かし”を封印するために『戯家王』を奉る神社を作り、鳥居や封印の札を貼りめぐらせ。」と。その通りにした村人は、ついに「らーめん」を手に入れ、誰もが虜になっていった。
さらに、村人たちは「もっといろんならーめんが食べたい」と思いはじめ、皆が毎日お参りをした。そして、九〇七人目の参拝者の時、「戯家王」の叫び声と共に、「“妖かし”電車」は、「麺鉄電車『なると号』」となり、全国をかけ巡っては、ラーメン店主をここへご招へいしてきた。そう、その村こそがここ「桑名らーめん街道」なのである。この電車は“らーめん好き”な人にしか見えず、らーめんに“こだわりを持った職人”しか乗ることができないと言う。
また、この神社にお参りすると「食に困らず、長生きできる」というご利益があるとされ、住人は皆、らーめん神「戯家王」を信奉する「らーめん教」の氏子“らーめんにあん”であって、らーめんをこよなく愛さなければならないのだ。その後「らーめん教」は瞬く間に全国に広がり、今では参拝者が後を絶たない。人々は「らーめん神社」参拝のことを「お食べ参り」と言って大切な行事としている。
なお、参拝した“らーめんにあん”たちは、自分がお参りしたことを残す千社札に、ラーメンに関するクイズを残していく習慣があり、柱などに貼られているのだとか…。